コマは高速回転するほどに姿勢は安定しやすいが、反面、軸の接地面には大きな摩擦が生じる。一方、低速回転の場合、摩擦は少ないが、姿勢は安定しにくくなる。これを振動数に置き換えると、ハイビートほど動的精度が向上するが摩耗は大きく、ロービートほど摩耗は少ないが、精度が外乱の影響を受けやすいとなるわけだ。ちなみにこの特性を利用して精度を高めたのがクォーツムーヴメントでその振動数は機械式を遥かに凌駕する。1970年代以降は、機械式でもハイビートによる高振動化が積極的に行われ、毎秒10振動(毎時3万6000振動)というムーヴメントが次々と生まれた。
そのメリットのひとつが、先にも挙げた摩耗が少ないという点である。これは、翻って長く使えるということでもあり、世代を超えて受け継ぐような高級時計ではロービートがしばしば採用されている。また近年はパーツの加工精度が向上したほか、新素材も導入され、ロービートでも精度が出やすくなったということも、採用するメーカーが増えてきた理由だろう。
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